古民家再生
基礎、土台、梁、床など各所補強を施し、長い間、家を支えてきた古材を活かしながら、再生後年月を経てもなお味わいを増す民家の力強さを感じて頂けます。重ねてきた家の歴史を守りながら、次世代へとつなぎます。
そこが知りたい
Q
昔ながらの民家は、現代の木造建築に比べて何がすごいのでしょう?A
木組みによる古民家と現代の家では比較のしようがありません。昔の民家は、何世代にもわたって住み続けられるものでなければなりませんでした。機械や金具のない時代に、長持ちする家を建てるには、気候風土に合った構造や、木の特質を踏まえた木組み、大工の優れた技術が必要でした。一方、現代の木造建築は、商品として開発されたもの。マニュアルの従い、金具や工具を使って建てる家と比較しても、意味がないでしょう。
また古民家には、その時代の社会構造や、そこに生きた人々の知恵や経験などが反映されています。村人たちとの共同作業を前提にしたプラン、住空間に見られるさまざまな工夫といったものは、現代の住宅には見られないもの。こうした点に、魅力を感じる人は多いです。本能的な部分で共感を覚えるのでしょうね。
Q
再生工事がしやすい家、しにくい家の見分け方はありますか?A
繊細な造りのものは解体・組み立てが難しく、単純な造りの建物はしやすいです。古民家を解体する場合は、建てた時と逆の手順で作業を進めます。このため、数奇屋造りや町屋造りといった繊細なものは、解体が難しくなります。逆に、農家のような素朴な造りのものは、解体も組み立てもしやすいと言えます。また、建築様式に関わらず、基礎回りの損傷が激しい建物の再生では、構造を補強するための特殊な技術が必要な上に、工期が長引き莫大な費用が必要になることもあります。
Q
古民家はどのように解体するのですか?また、解体せずに現地再生する場合はどんな工事を行うのですか?A
組み立てた時と逆の順序でひとつひとつ手壊しします。古民家再生には、建物が建っている場所で再生する現地再生、すべて解体して別の場所で再生する移築再生、複数の古民家の古材を使って新たな場所に家を建てる古材利用の三つの方法があります。再生を前提とした解体では、前述したように、建物を組み立てた時と逆の順序で手壊しします。手間と費用は、機械解体の2~3倍。 また、木組みによる家づくりを理解している職人でなければ、上手に壊すことはできません。解体した古材には、一本一本番付けをします。中には腐っているものもありますが、これにも番号をふり、補強したり新しい材と入れ替えたりします。解体した材料は、風雨にさらされない乾燥した場所で保管すること。100年以上経た古材であっても、環境が変わるとすぐに変形が始まります。 解体せずに現地再生するには、壁を落として柱と梁の骨組みだけの状態にし、建物をジャッキアップしたうえで、鉄筋コンクリートの基礎を造り床の水平、柱の垂直を完全に修正するといった方法を取ります。一方、壁を残したまま、またはジャッキアップダウンはせずに、おおまかな水平垂直を確保する方法もあります。
Q
建物の骨組み以外にも再生できるものはありますか?A
捨てるところはありません。工夫次第ですべて再利用できます。板材はもちろん、金物、土壁、建具と、ほとんどのものが再生できます。土壁はほぐして、建具は補修したりサイズを変えて、新たな材料として利用します。建具はぜひとも再生したいもののひとつ。趣のある意匠は、新たに作ろうとしても困難なものです。
同じ用途で再生できないものとしては、瓦と芽が挙げられます。いくら良い瓦でも、数十年以上経つと痛みが生じ、屋根材としては利用できません。しかし、割れた瓦を庭づくりに生かしたり、土壌に埋め込むなど、デザイン的な使い方はできます。天然の材料からつくられた古民家は、捨てるところがありません。